朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


私は顔を隠したままなので、笑満がどんな風ににやにやしているかはわからない。


にやにやしていることはわかるけど。


「ええと……発作を落ち着けるため、だと。……流夜くんからです」


「それで落ち着いたんだ? 流夜くんすごいね」


「うん……」
 

少しだけ肯く。
 

笑満も、私の発作を目の当たりにしたことはある。


その折は、対処法を知るお隣のお姉さんを呼びに行ったり、結構迷惑をかけてしまった。


それが抱きしめられて収まってしまうとは。


……流夜くん、ほんとに何モノだ? 


そして笑満も『流夜くん』って呼ぶのか。


「あたしも流夜くんに師事しようかなー」
 

な、なんの弟子入りをする気だ? 


私はまだ恥ずかしさが引かなくて、顔を隠していた。


「それで――抱きしめられていて、寝ちゃった、と?」


「そこまでしか憶えてない……」

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