朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「あー、なにやらかしたんだろ……」


「流夜くん、怒ってたりしたの?」


「怒ってはなかったけど……なんか淋しそうだった。だから気になって」


「ん。じゃあ訊きに行こう」
 

笑満が、すたっと立ち上がった。


「流夜くん、旧館にいるだろうから、行くよ」


「え、笑満……」


「うじうじ悩んでる暇あったら行動する。はい、行くよ」


「でも、笑満……」


「でもとかだってを言わない。言ったでしょ。流夜くんなら咲桜をあげてもいいって。あたしだって自分の言葉の責任くらいとるよ」
 

ふん、と腕組みで見下ろされて、私は閉口した。
 

笑満も自分も、頭で考えるよりも足を動かす方が得意だった。


今、その笑満の行動力が発揮されていた。


「さー行くよー」
 

まだ気が進まない私の腕を摑んで、ずるずる引きずっていく。
 

木陰で、道中のその声を、寝転がって聞いていた人には、気づかないまま。


「……りゅうやくん?」
 

頼、だった。

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