朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】
「……ですか」
ふと、咲桜の口癖を朝間先生の口から聞いた。
どうやらこれは、朝間先生から咲桜にうつったもののようだ。
「では、今日のところはお暇します。くれぐれも、ですよ、神宮さん」
ぺこりと頭を下げて、朝間先生は出て行った。
扉が閉まるのを見て、咲桜の膝から力が抜けた。
「咲桜っ?」
慌てて抱き留めると、咲桜は腕にしがみついてきた。
「ごめん、流夜くん……」
「いや、朝間先生がいたのは驚いたけど、……朝間先生の言うことはもっともだと思うよ」
「うん……。ごめん、夜々さんのこと、話してなくて」
咲桜の顔は蒼ざめていた。
このまま歩けるのか心配になって、咲桜を抱きあげた。
「わっ?」
「暴れない」
姫抱きされた咲桜は瞳を白黒させて戸惑う。
「ちょ、流夜くんっ」
「大声出さない。朝間先生が来るぞ」
言われて、はっと両手で口を押えた。
……来ない方がいいのか?