朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】
三人は元来の素質もあったのだろう。
対事件向きの頭と行動力があった。
流夜はある理由から、一時的にだが教師になってしまい、吹雪は警察には入ったもののすぐに左遷。今は資料庫に隔離――配属されている。
しかしそこで日夜、流夜や降渡と事件解決の力になっているのだからわけのわからない思考回路をしている。
どうせだったら学生時代のように、警察の人間としてではなく、降渡のように探偵業的に関わらせた方がよかったかとも思ったが、警察機構との繋ぎ役が必要なのもまた事実だ。
降渡はそれこそ、俺の後継者と言われる。
大学を中退して探偵業を始めたからだ。
俺としては自分の後継者にと育てて来た三人のうちの一人だから、ある程度は補佐も必要かと考えていた。
裏切られた。
降渡の力に、俺は必要なかった。
俺の手なんか借りずとも、流夜、吹雪、そして諏訪山(すわやま)の娘ちゃんの支えで独立してしまった。
降渡が一番ちゃらんぽらんだっただけに少々意外だった。
ま、いつまでもガキじゃねえか。
幼い頃から育ててきたからつい手を貸したくなるが、今はもうその手も引くときなのだろうか。
……代わりに。
長い間放棄していた、相棒としての役割が廻ってきそうだな。