朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】
愛子も暇な奴ではなく、むしろかなり忙しい方の仕事をしているので、今日明日でまた行動を起こすことはないだろう。
明日、学校で隙を見て話す時間を作るか。
……あ、そう言えば。
愛子を介して自分の連絡先は把握しているようだが、華取の携帯番号なんかは知らなかった。
……学校に届けてあるのを確認すればすぐわかることだけど、なんだかそういうルートは使いたくない気がする。
やはり今日のうちに連絡を取る方法だけでも作っておくか……そう考えながら箸を動かしていると、在義さんが口を開いた。
「そう言えば、流夜くんはうちに来るの初めてだったか?」
「はい。お誘いはいただいてましたけど……」
今日みたいに夜遅くまで手伝ったときなんかに、「ご飯を食べていきなさい」と言われたことはある。
本署から在義さんの家までは、車を使えば割かし近い。
俺は、在義さんに娘がいることを知っていたから断っていた。
教職についたのをきっかけに住み始めた場所が華取家と近くなだけに、どこから自分の本業がばれるかわからなかったからだ。
まだ、自分が警察に関わっていることが学校側にばれるわけにはいかなかた。
……用心していたのに、愛子の所為で今日その苦労が水の泡になった。
だが、華取も口外するような奴ではないだろうから、そこは安心している。