朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「……教師の立場ではなく、でいいですか?」


「ああ」
 

在義さんは静かに肯いた。


「たまに言動が物騒だけど、愛らしいと思います。なんというか……在義さんの娘、ですね」
 

俺の言葉はそこで途切れた。
 

在義さんのまとう雰囲気が怖くなっていた。


やば……言い過ぎたか。危険人物認定でもされたら終わりだ。


せっかく見つけたのに。


……ん? 見つけた? なにをだ? 


脳内で、自分の思ったことに疑問符を浮かべた。


俺も疲れているのだろうか。
 

ふう、と在義さんからため息がもれた。


「……咲桜は、反抗期がなかったんだ……」


「……反抗期? ですか?」
 

今度はなんの話だろう。


俺は一つ安堵しながら、オウム返しに問う。


どうやら睨まれてはいないようだ。

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