朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】

 
眠たくて視界がはっきりしないのか、目をこすっている。


もしかして訪ねてくることを見越して起きていたんじゃ……と刹那思ったが、違うようだ。


口ぶりからして、来たのは在義さんと思われていたようだし。


子供があまり夜更かしするなと言わなければ。


「挨拶だけ、来た」


「あ、はい。わざわざありがとうございます」
 

華取は丁寧に頭を下げた。律儀だ。


……と言うか、眠気で朦朧しているのかもしれない。


瞳がぽやんとしていた。そのくらいなら早く休めばいいものを。


「ご飯、美味しかった。ご馳走様」


「お腹いっぱいになりました?」


「ああ。久しぶりに手作りをいただいた。ありがとう」


「それはよかったです」
 

……なんか、こいつの周りにぽわぽわした花でも舞っていそうな、毒気の抜かれる笑顔だ。


「あと、華取の連絡先を訊いておいてもいいか? 今日はもう遅いから、話は日を改めたいと思う」


「あ、うんそうでした。ちょっと待ってくださいー」

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