朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


華取は引き返し、勉強机の上のスマートフォンを持ってきた。


机の上にはノートが見えた。


「遅くまで勉強してたのか?」


「え?」
 

スマートフォンを操作していた華取はきょとんと見上げてくる。


俺の視線が机に向かっているのに気づいて、「あ、あれは」と言い繕った。


「笑満が出してくれた課題です。私、勉強の方はあまりよろしくないので……でも、笑満と頼と一緒に卒業したいですから。笑満が、自分の復習にもなるからって、問題作ってくれるんです」
 

なるほど、と納得がいった。


華取の成績は、本人が言った通り。


一方、日義は学年主席。松生も、トップクラスの成績だ。
 

私立藤城学園は、県内でもトップレベルの進学校だ。


塾やら予備校やらに通っている方が多い。


だが華取は家のことをしているようだから、そんな余裕はないのかもしれない。


そこを松生が補ってくれている。いい友人だな。


不法侵入上等の、こっちの幼馴染たちに見習わせたいくらいだ。


「で、私のアドレスです。ラインでもいいですか?」
 

華取に促されて、肯く。

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