朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】
また自分の思考回路にツッコんでいると、俺が黙り込んだのを不審に思ったのか、華取が首を傾げた。
「? 先生? ――わっ?」
今度は華取が、驚いたように小さな悲鳴をあげた。
俺の手が頭に乗ったのだ。なんとはなしに動いてしまった。
……本格的に大丈夫だろうか、俺。
そんなことを考えつつも、華取の頭を撫でている。
華取は困ったように見上げてくる。
「どうしたんですか? 先生も眠いんですか?」
「いや――」
さっきから自分の言動に疑問符がいっぱいで、むしろ解決してほしいくらいなのだが。
……でも、せっかく、今、華取のこの距離にいるのは、俺だ。
「……お前は大丈夫だ。愛子が言っていたことで不安になったり、俺との関係で心配することはない。お前は俺が、絶対に大丈夫にするから」
「………」
やっと、手を離すことができた。
「じゃあ、またな」
あったかくして寝ろよ、最後にそう残して階段を下りた。