朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】
3 ……なんで、そんなものを?
side流夜②
「仮婚約ねえ……」
旧館の資料室の机に寄りかかって呟いた。
藤城学園は旧い学校なので、この旧館は創設当時に本校舎だったところだ。
新校舎が随分前に建設されて、そちらに充実した設備があるため今は授業では使われていない。
俺は教科主任に一応承諾を得て、旧校舎の一室を占領していた。
資料室と言っても、わざわざ旧館に資料を置いておくのは使い勝手が悪い。
もう必要のないものを入れておく、倉庫のような役割をになう部屋だった。
「そこでいいなら」と、主任はそんな場所を希望したことを深く追及はしなかった。
今は、昼休み。華取を待っているところだ。
……松生には話すように言うかな……。
松生笑満は、成績トップクラスの優等生だ。
松生はいつも華取と一緒にいるから、注意して見ている一人だった。
華取が在義さんの娘と知っていたので、無暗に関わらないようにしていた。
ああそれから、あまりじーっと見るなと言わねば。