朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「いいんですか? 先生が抱え込んじゃったりは……」


「元々そういう性格だ。心配しなくていい」


「そう、ですか?」
 

華取は心配するような眼差しだ。


だが俺の仕事は、関係がないのなら本当に知らない方がいいものだ。


今知られている奴ら以上に、誰に言う気もない。


「それで――華取の話は?」


「あ、そうでした」
 

華取は少し緊張した顔で、こちらへ歩み寄った。


足が止まると突き出されたのは、小さな袋だった。


「……これは?」


「お弁当です。先生のお昼ごはんと、夕飯の二食分あります」


「………」
 

………?
 

正直――華取の言動の意味がわからず、受け取ることも返事も出来なかった。


「……なんで、そんなものを?」

< 68 / 302 >

この作品をシェア

pagetop