朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


わざわざ呼び出しただけでも、華取の個人的な時間をもらってしまっているのに。


そんなに気を遣わせてしまったか?


「一応ですけど、仮でも偽でも、ですから」


「いや、そういう負担もかけてしまうわけには……」


「世話焼くのはすきなんです」


「……は?」
 

断ろうとした俺を遮って、華取は微笑を見せた。


「最近父さんがしっかりしてきたんで、もう親離れする時期かなって。だから替わりに先生の世話を焼くことにします」
 

どんな理論だ。
 

そしてそれを少し嬉しく思ってしまった自分、どうした。


「……華取の負担にならないか?」


「なりません」
 

即答だった。


はっきり断言されてしまっては、継ぐ言葉を見失ってしまう。

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