朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


振り向く華取に、刹那、これは言ってもいいのだろうか悩んだ。


だが、考えるより口をついてしまった。


「いつになるかわからないけど、弁当の礼がしたい。何か考えておいてくれないか?」


「えっ、い、いいですよ? 私がすきでやってることなんですから」


「それこそ俺の気が収まらん。……愛子に言われたんじゃないか?」
 

そう問うと、華取はしまったというように顔をゆがめた。


「やっぱりか。愛子の頼みだったら断りにくいよな」


「べ、別に私、マナさんに弱み握られてるとかじゃないですよっ? マナさんに提案されて、私がやりますって言っただけで――」


「それでも、愛子がけしかけた話だろう?」


「……私がやりますって言ったことです」
 

……案外頑固だな。


こういうところ、表への出し方は違うけど、在義さんに似てるって思う。

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