朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


しかし華取は華取で、この件にやる気を出してしまっているようだ。


これを無理に辞めさせても、むしろ申し訳なくなる。


そうだなー……。


「何か――華取のすきなものとかあるか?」


「すきなもの、ですか? なんでですか?」


「華取がやってくれることへの礼だ。そう思えば、お互い様だろう?」
 

こうでもしないと俺は在義さんだけでなく、華取にまで恩義が返せなくなりそうだ。


なんとなくだけど、華取とは対等でいたい。


……そんな感情があって、少し扱いに困る。


「ええと……」


「………」
 

華取は口元に手を当てて考え始めた。


自分から振った話だが、こんな踏み込んだことを訊いてしまってよかっただろうか……。


在義さんに問い詰められても、礼だと言い張ろう。


ぱっと、何か思い至ったらしい華取が笑顔を見せた。


「笑満と桃子母さんと夜々さんとマナさんがすきです」
 

想定外の答えだった。


戸惑うしかない。

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