朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「………いや、人物で言われても……というかそれ、総て女性か?」


「あ、在義父さんと龍生さんと頼もちゃんとすきですよー」
 

……そう言ってもらえなければ、在義さんは泣いてしまうかもしれない。


継いだ言葉が若干投げやりだったのは、この際気にすまい。


「けど、その人たちに礼をするのも違うと思うな……」


「ほかにすきなのは、紅茶とか蒸し饅頭とかですかね。あ、天霧猫様は大すきですっ」
 

紅茶と蒸し饅頭。


緑茶や洋菓子じゃない辺り、組み合わせが特徴的だ。


天霧猫は小説家で、俺もその名はよく知っていた。


「そうか」


「でも、ほんとに気にしないでくださいね? 私のやりたいことやってるだけですから」
 

華取が焦ったように手を振った。


「うん、ありがたくいただく」
 

そう答えると、華取は少し安心したように表情をゆるめた。

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