朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


「雲居(くもい)のつかい。昨日、神宮に書類届けてほしいって言われて」


「降渡(ふると)? てめえで来ればいいだろうが」


「俺もそう言ったけど、今忙しいんだと」
 

ほれ、と、鞄に突っこんであった封書を取り出す遙音。


それを受け取り、適当に中身を眺める。


……吹雪のところへ行ったら報告だな、と意識の中で判を捺した。


「美味かったー」
 

綺麗に平らげられた弁当。


二人でわける形になってしまったから、当然食べた量は少なくなったけど……まあ、たまにはこいつにも美味いものを食べさせてやっていいだろう。


華取に感謝した。


「じゃー俺帰るわ。ごちそーさま」


「寄り道すんなよ」


「おー。今度手作り弁当の彼女紹介しろよー」
 

にやりと笑みを残して、遙音は愉快そうに部屋を出て行った。


「……彼女?」

 
慣れない単語に、ぽつりと呟いてしまった。

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