朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】
ふと、神宮の足元に目が行った。
昨日、神宮の部屋にあったのとは柄が違うけど、似たような大きさの袋が置かれている。
こんな可愛いもの、神宮が購入したものではないことは明白だ。
……そんな神宮は想像するだけでキモい。
そして、誰が作ったか言わなかった美味い料理。
知り合い。――知り合い、ね。
……そうだな、ここは、お前らが言う証拠摑んでから来い、ってとこか?
自分に問題をふっかけ、しかしあらかた推測はついているので、さて証拠を摑みに行こうかと机から腰をあげた。
追い詰めるのなら逃げ場をなくせ。逃げ場を埋めて退路を断て。
極悪なまでに性格の悪い春芽吹雪(かすが ふゆき)流の攻め方だ。
今はぴったりだと思う。
神宮、雲居、春芽の三人の師が華取さんと二宮さんなら、俺はその三人に師事していると言えるかもしれない。
「ま、いーや。道踏み外すなよ、センセイ?」
「お前は大人しく生徒やってろよ……」
呆れ混じりにそんな忠告を受けても、俺は肯きはしない。
大人しくやっていたら、なんにも出来ねーんだ。
お前らに憧れちまった身としてはなぁ?