朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


すぐに華取咲桜の教室のお邪魔しようかと思ったけど、それはやめておいた。
 

面識がない後輩のところへ乗り込んでも警戒されるだけだし、俺にも、華取咲桜の周囲に対して軽率なことは出来ない理由がある。


華取咲桜が本当に神宮の関係者なら、なおさら。
 

雲居から、華取在義県警本部長は極度の娘バカだと聞いている。


けど華取咲桜は、俺が神宮同様警察に関わっているとは知らないだろう。


まだ高校生という立場上、学者である神宮や探偵の雲居とは違って、内部でも存在を秘されているからだ。


誰の口の端にのぼることもない。――神宮以外には。
 

学校で弁当の受け渡しをしているなら、家まで押しかけるような関係ではないのだろうな。


一番考えやすいのは、神宮の雑な生活にみかねた華取さんあたりが、娘に神宮の食事を作るように言った――だろうか。


あいつ、ほんと自分に興味ねーからな……。

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