可愛い友達
男友達
そもそも…無理だった。
帰った後も、さゆからの電話攻撃で。
どんな人なの?
何学科?誰と仲良いの?
もう、完全に夢中になってる…。
今更、断るうまい理由なんて、無いよ…。
大学に入ってすぐ、あまり社交的じゃない
あたしは…。
サークルも考えてなかったし、
合コンなんて、誘われようものなら
最悪、男メンバーの代わりだったりする。
女のコ扱いされる人生を…
送ってこなかったから。
好きな男のコが出来ても、口に出す勇気
なんかないまま。
可愛くてちっちゃい彼女を連れて歩く
姿を見ては、勝手に落ち込んでいたりした。
そんなあたしが、大学に通い始めの頃、
朝早く乗った電車で、痴漢にあった。
珍しくタイトスカートを履いてきたことを
激しく後悔しながら…。
逃げようととしても、混んでてなかなか
移動できず。
こんなあたしでも…。
怖いのと恥ずかしいので…固まってしまって。
声が出せないでいた時。
あたしの手首をぎゅっとつかんで、
こっち。と、引っ張って。
すみません〜。と、反対側の入り口まで
ずんずんと連れて行ってくれた。
それが…さゆ。
大学のある駅で、一緒に降りて。
はぁ…。大丈夫?と、あたしの顔を
見上げたのは、隣の席で見たことある子。
…こんなに可愛らしい女のコに、あたし
助けられたの?
驚いて見てると。
混んでると…ああいうの多いよね!
ほんと、頭にくる。
もう、大丈夫だね。と、さゆは笑ったけど。
あたしの手首をつかんだ手は。
震えていたのを知ってる。
うん…。
いい子なんだよね…。
可愛いだけじゃなくて、いい子。
だから…余計強く思う。
好きにならない人なんか…いるわけないって。