高桐先生はビターが嫌い。
「…ひ、ヒトシ君…何で」
あたしはヒトシ君が目の前に来るなりそう言うと、何だか少し怖くて、高桐先生に近づく。
まさか…帰ったフリをして、待ってたの?
あたしがそう思いながら、無意識に高桐先生の背後に隠れるように移動すると、その時ヒトシ君が怒った様子であたしに言った。
「アイリ、お前っ…誰なんだよその男!」
「!」
「何か嫌な予感がしてたんだ。さっきはレストランで誤魔化されたけど、やっぱり俺の他にも男がいたんだな」
「いや、あのっ…」
「帰らないで待っててよかったよ。ほら来い。たっぷり言い訳を聞いてやる、」
ヒトシ君はそう言うと、見たことのないくらいの怒った顔で、そのままあたしの腕を強引に掴もうとする。
けど、すぐ傍にいた高桐先生は、もちろんそれを許さない。
ヒトシ君があたしの腕を掴む直前に、高桐先生が割って入ってきて、言った。
「っ…やめて下さいよ。どこに連れて行く気ですか、」
「…お前には関係ないだろ。浮気相手は引っ込んでろ」
「浮気相手って、そもそもあなた誰なんですか。この子とどんな関係があってここに来てんのか教えて下さいよ」
高桐先生はそう言って、ヒトシ君からあたしを守ってくれる。
目の前に見る高桐先生の背中。
その背中が、何だか広く感じて…。
今は全然そんなこと考えてる場合じゃないのに、思わず、嬉しくなってしまう。
すると、高桐先生の言葉に、ヒトシ君が言った。
「…俺はアイリの彼氏だ」