高桐先生はビターが嫌い。
「…?」
高桐先生がそう言うのを聞くと、あたしはわざと少し笑って言った。
「ど、どうしたんですか高桐先生。らしくないですよ~」
冗談ぽくそう言って、だんだん高鳴っていく緊張とこの何とも言えない雰囲気を誤魔化そうとする。
けど、高桐先生はそんなあたしの言葉に、冷静な態度のまま言った。
「…帰る前に、一つだけ日向さんに聞いていい?」
「…?」
「さっきのコンビニでは何か…すぐには聞けなかったけど。日向さんが付き合ってる男のことで。
この前実は、市川さんから詳しく聞いたんだ。日向さんって、今も付き合ってる男がたくさんいるんだって?」
「!」
「寂しいからっていう理由はこの前した話とかでなんとなくわかるんだけどさ。でも…さっきみたいなあんな危険な目に遭う必要ある?
何で、日向さんは…そんなことしてるの?」
高桐先生はそう問いかけると、「教えて」とあたしの返事を待つ。
だけど一方、高桐先生のそんな問いかけに、少しビックリしてなかなかすぐにはその答えを返せないあたし。
…市川…そんな話も高桐先生にしてたのか。まぁあの過去の話をしたなら仕方ないんだけど。
わかってる、けど。
あたしは少し考えると、高桐先生を見ない後ろ向きのまま、高桐先生に言った。
「……たくさんの繋がりを持っていないと、落ち着かないんです」
「!」
「高桐先生はもしかしたら、昔からたくさんの愛情をもらってきたからわからないのかもしれないですけど、あたしはそういう愛情とか…ずっと無知ですから」
「…、」
「ただ…毎日感じる寂しさを、誰かで紛らわせたいだけ」