高桐先生はビターが嫌い。

あたしはそう問いかけると、思わず泣きそうになりながら、先生を見上げる。

だけどあたしのその問いかけに、頭の上にまだ?を浮かべる高桐先生。

そんな高桐先生に、あたしは言葉を続けた。



「教師として、あたしのことが心配だからですか?
さっきみたいな危ない目に遭ったって、あたしは平気ですよ。そんなことくらいで今までやってきたことを完全にやめられるわけない、」

「!」

「…先生の“教師としての”愛とか心配は、求めてないんです。その方が後々また寂しい思いをするだけですから。
あたしは本気で寂しくて死んじゃいそうなんです。
…“仕事上当たり前のこと”ならそんなのいらない、」



あたしはそう言うと、思わず、寂しさが込み上げて我慢していた涙が頬を伝ってしまう。

…わ、まずい!

けど、そう思った頃にはもう既に時遅しで。

高桐先生の前で泣きたくないのに、こんなのは情けないだけなのに、一度こぼれだした涙はもう…簡単には止まらない。



「…~っ、」

「日向さん…」



ああもうダメだ。逃げたい。ってか逃げよう。

あたしはそう思うと、再び高桐先生に背を向けて、すぐに部屋に入ろうとする。

生意気言ってすみません。

おやすみなさい、と。

しかし…



「待って!」

「!?」



そんなあたしの行動を、何故かまた、すぐに引き留める高桐先生。

ドアについていた手に、少し力を込められる。

高桐先生のその必死な一言にあたしが少し驚くと、高桐先生が次の瞬間何かを言いかけて…



「日向さん誤解してるよ!俺はっ…」

「…え、」



だけど、その時。

その高桐先生の言葉を遮るように、突如、隣のドアが静かに開いた。



「……何してんの?君ら」
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