高桐先生はビターが嫌い。
「!!」
「!!」
そんな聞き覚えのある声がして、思わずビックリしたあたしは声がした方を高桐先生と一緒に振り向く。
するとそこには…
「っ、う、うぇっ?篠樹!?」
「…っ、」
後藤先生が、玄関のドアから顔を出して、こっちを見ている姿があった。
そしてそんな突然の後藤先生の登場に高桐先生が変な声を出すと、それを聞いた後藤先生が言う。
「何そのお前の“うぇっ!?”って反応。…何か俺が来ちゃマズイようなことでもしてた?もしかして」
「!!っ、いや、そ、そんなこと…してるわけないだろ!」
「や、お前慌てすぎだし。っつか奈央ちゃん泣いてね?何泣かしてんの。しかも何か近いし距離」
後藤先生はそう言って小さくため息を吐くと、すぐ傍まで歩み寄ってきて、接近していたあたしと高桐先生の距離を離す。
そんな呆れ気味の後藤先生の言葉に、一方必死で「俺が泣かせたとかじゃないから(たぶん)」と訴える高桐先生。
だけど後藤先生は、そんな高桐先生に言った。
「…けどな、実際端から見るとお前が奈央ちゃんにしつこく迫って泣かせてるみたいだったぞ」
そう言って、「大丈夫?奈央ちゃん」とあたしの頭をぽんぽんする後藤先生。
そんな後藤先生に、高桐先生が未だ必死な様子で言った。
「いやっ、俺は日向さんを孤独から救ってあげたくて…っつかお前こそ何でわざわざ部屋から出てきてんだよ、」
「え、俺?俺はリビングでパソコンしてたら外からやたらお前らの声が聞こえてきてたし。そりゃあ気になって出てくるだろ」