高桐先生はビターが嫌い。
「アイリちゃんって、お酒飲まないの?」
ドリンクバーに到着した時、グラスにコーラを注ぎながら高桐くんがふいにそう問いかけてきた。
あたしはオレンジジュースを注ぎながら、その問いに答える。
「あたし飲めないんだよー。なんか、お酒って苦手で」
いや、まだ未成年だからなんだけどね。
内心そう思いながらも、笑顔を浮かべる。
するとそんなあたしの言葉に、無邪気に笑顔で答える高桐くん。
「あ、わかる!ジュースの方が気兼ねなく飲めるよね」
「え、高桐くんもお酒苦手?」
「うん、俺もダメー。ビールとか…そもそも苦いのってホント苦手でさ」
「へー」
高桐くんはそう言うと、「その点ジュースは良いよね」と早速淹れたばかりのコーラを一口、口に含む。
最初は会話もぎこちなかった高桐くんだけど、今じゃもうだいぶ慣れてきたみたいだ。
その純粋な笑顔がもう本当にまぶしすぎる。
あたしがそんなことを思っていると、部屋に戻りながら、不意に高桐くんが言った。
「あー…あの、アイリちゃん」
「うん?」
「えっと…嫌、だったらいいんだけどさ、」
「?」
「連絡先とか…教えて、もらえない…かな?」
「!」
「なんか、アイリちゃんとは、合いそうな気が…するっていうか」
高桐くんは服のポケットからスマホを取り出しながらそう言うと、合コン開始の時と同様、恥ずかしそうな、真っ赤な顔をする。
そんな思わぬ高桐くんの言葉に、一方のあたしは思わずきょとん、としてしまって。
だって…こんなに良い展開…あってもいいの!?
あたしはそう思いながら、半信半疑ながらも、「もちろん!」と言ってスマホを鞄から取り出した。
…取り出したから、いけなかったのかも…しれない…。