高桐先生はビターが嫌い。

「!」



そう言って、高桐先生の顔を見上げる。

…だけど。

純粋に、見上げただけなのに、その時物凄い至近距離で高桐先生と目が合って、あたしはまた少し驚いた。

そしてやっと今自分がしているこの状況に気がついて、さすがに恥ずかしさを感じたその直後…



「…あ、て、ていうか、ごめんなさい」

「…」

「なんか、勢いよすぎちゃいましたね」



先生、背中大丈夫ですか?

そう言って慌てて、高桐先生から離れようとしたら。

何故かその瞬間、引き留めるように。

高桐先生に、その両肩をぐっと掴まれた。



「!」

「…、」

「…先生?」



高桐先生のそんな行動に、あたしは首を傾げて高桐先生を見上げる。

どうかしましたか?

しかし、そう問いかけてみても、高桐先生は特に反応がないまま。

何か…いつもの高桐先生と、違う…?

そう思っていたら、やがて高桐先生が、掴んでいたあたしの両肩を、ゆっくりと…自身の方に引き寄せて…



「…わ、ちょ、先生っ…」

「………日向さん。ソレ、反則だから」

「え、」



と、耳元でそっと囁いた。
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