高桐先生はビターが嫌い。
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陽太が、奈央ちゃんの部屋の中に隠れてしまってから、数分くらい経った頃。
心配しながら外で待っていたら、やがて勢いよく陽太がそこから出てきた。
「…っ!?わ、」
「……おっせぇよ」
俺はドアの隣の壁に寄りかかりながら待っていて、そんな俺の存在にすぐに気がついた陽太に、少しビックリされる。
そして俺が不機嫌な口調でそう言うと、陽太が言った。
「…待ってたの?」
「当たり前じゃん。どさくさに紛れていきなり女子生徒の部屋に侵入するからマジビビったわ」
「侵入て」
「違うの?」
「……や、そうかもしんない」
そう言うと、「最悪だぁ、俺…」なんていつもの弱虫に戻って、自身の顔を両手で覆う。
その言葉に、俺は壁から背中を離して陽太の隣に行き、少し声のトーンを落として言った。
「…で、何してたの?さっき奈央ちゃんと」
「っ…な、何だっていいじゃんっ」
「や、よくないだろ。っつかお前顔が赤い。まさか…やらかしたんじゃないだろうなぁ」
「!?」
あまりにも、陽太が「構うな」オーラを漂わせるから。
そんな陽太を怪しく感じた俺は、そいつと部屋に戻りながら、何とかさっきの隠された状況を聞き出そうとする。
けれど、陽太は頑なに教えてくれない。
それどころか、玄関に入るなり靴を脱ぎながら、背中越しに言った。
「……それ聞かないでお願いだから」