高桐先生はビターが嫌い。
陽太はそう言いながら、ポケットからスマホを取り出して、それをすぐ近くのテーブルに置く。
俺はそんな陽太の言葉を聞きつつ、そいつの向かいのソファーに座りながら言った。
「…この状況はって何。奈央ちゃんなんかあったの?」
「…うん、まぁ」
「じゃあもしかして、陽太は奈央ちゃんを助けたくて近づいてるってこと?教師として」
俺はそう聞くと、目の前のそいつの答えを待つ。
…もしかしたら、俺が勘違いをしていたのか。
奈央ちゃんに何かトラブルがあって、それに気がついた陽太がただ単に助けようとしているだけ…なのかもしれない。
っつか、そうであってくれ。
するとやがて、俺がそう思っていると、そのうちに陽太が口を開いて言った。
「…そうだな」
「…」
「教師として。っていうか……そもそも日向さんて、俺が思ってたよりも寂しがり屋ってか…でもそれをあんまり表に出さない子、で」
「…」
「だから最初、初めて会った時に嘘吐かれまくってたんだけど…その嘘の理由を剥がしていったら、
なんか…日向さんは本当の愛を求めてる子、だったの。実際」
陽太はそこまで言うと。
ソファーに横たわっていた体を起こして、今度は背もたれに背中を預ける。
そんな陽太の話を俺は黙って聞いていて、そしたらやがて陽太がその続きを口にした。
「……そんなこと知ったらさ」
「…?」
「絶対、俺が守ってやりたくなるじゃん」