高桐先生はビターが嫌い。

「!」



そう言うと、ガシガシと、照れ臭そうに頭を掻く陽太。

その何気ない言葉に、一方の俺は少しビックリして目を見開く。

けどそんなことを口にした陽太は、照れつつも相変わらずの真剣な顔。

…ただ、俺の方は見ていないけど。

だから俺は、そいつの意外な言葉に驚きつつ言った。



「…マジか」

「…うん。ってか何その反応。そんな驚かないでくんない」

「いや、そりゃあ驚くだろ。だってあの陽太が、だよ。そんなこと言うとか」



俺はそう言うと、独り頭を抱える。

…俺がそう言う理由。

それは、陽太は昔から大の奥手だったからだ。



例えば、高校の時。

陽太はクラスの女子に告白をされて、付き合ったはいいけど一切手を出さなすぎてフラれたことがあった。

何だかんだで2年くらい付き合ってたみたいだけど、1年目でやっと手を繋いだくらいだったかなぁ。

結局、キスもしなかったらしい。

それに、大学に通ってた頃も彼女ができた時があったけど、ある日彼女の部屋に行ってそういう雰囲気になった時に、

陽太は恥ずかしすぎてキスすら出来なくて、「今日はゴメン!」なんつって一方的に帰った…とか言ってたな、確か。

…まぁそれを思い出すとそんな簡単に奈央ちゃんに手を出すわけはないんだろうけど、でも「守ってやりたくなる」とか言い出すあたり成長してんじゃん。

だから俺は、そんな陽太に言った。



「っつかさ…陽太、それ絶対まだ好き…いや諦めるどころか余計好きになってんじゃん。奈央ちゃんのこと」

「!?っ、ち、違うよ何言ってんの!」

「あ、ほら顔赤くなってきた。ダメだぞお前、生徒相手に。もし、奈央ちゃんがお前のこと好きでもそういう目で見たらダメなんだからな、お前は」

「!」
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