高桐先生はビターが嫌い。

俺がそう言うと、その言葉に俺から目を反らす陽太。

そして、独り何かを考えると…



「…ふっ」

「え、お前何笑ってんの。っつかニヤけてる?きもい」

「!っ、に、ニヤけてないし酷いし!」



何を考えていたのか。

突如、陽太がニヤけだすから、それを間近で見た俺はちょっと引いてしまった。

まさかコイツ…この期に及んで奈央ちゃんと自分のラブシーンを頭の中で妄想してた?

いまダメだっつったばっかなのに。

そんな陽太に俺が実際に体を軽く引いて見せると、それを見た陽太が慌てた様子で言う。



「ニヤけてたように見えただけじゃん篠樹が!」

「俺の見間違いってこと?…えーそうかなぁ」

「そうだろ!」

「いやー絶対ニヤけてただろ。あの顔は教師の顔じゃなかったぞ完全に」



そう言うと、「やっぱ引くわー」と。

陽太からまた体を引いて見せる俺。

奈央ちゃんのこと、その様子だと諦める気なんてさらさらないじゃんね。

どんな妄想してたのかはもちろん知らないけど、少し年を重ねて陽太も少しは男になったか。

…それを考えると嬉しい気はするけど……いや、やっぱ嬉しくない。

すると陽太はさすがに焦ったのか、疑う俺に言った。



「違うって、違うんだってマジで!」

「何が」

「ってかお前さ、“もし奈央ちゃんがお前のこと好きでも”とか…そんなこと言うのは無しだろ!」

「…どういうこと?意味がわからん」

「っ、そんなこと言われたら、わかってても勝手に想像するだろ!」
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