高桐先生はビターが嫌い。
「…」
…やっぱ妄想してニヤけてたんじゃねぇか。
俺は陽太のそんな言葉を聞くと、独りそうやって確信した。
「………お前完全に…好きなんだな奈央ちゃんのこと」
「だから、そういう…!」
「白状しろ?大丈夫、俺以外聞いてないから」
「言えるかっ!…あっ、てか、言えないよ!…いやこれも違うな」
「…」
…墓穴掘ってんじゃねぇか。
俺は陽太のそんな言葉を聞くと、黙ってソファーから立ち上がる。
けど、そんな俺を陽太は逃がさない。
「ちょ、待てって!今の誤解だし!」
「いや、誤解してないしよくわかったよ。俺もう止めない」
「っ、だからー!」
「…奈央ちゃんとお幸せに」
「!」
…冗談で言ったつもりだったのに。
俺がそう言った途端に、またわかりやすく顔を真っ赤にさせるそいつ。
そして、今度は独りで勝手に照れ出すから。
あ、これまた妄想したな。
俺がそう思って白い目で見ると、我に返った陽太は「違うから!」とまた俺に否定した。
…俺はお前の彼女か。
だけど。
こうやって、陽太が俺に否定をするのも。あまり深くは口に出さないのも。
ちゃんと理由があるから、っていうのも…俺は知っている。
今度は……奪うわけないのにな。
俺はそう思うと、必死で否定をして見せる陽太を背に、リビングを後にした…。