高桐先生はビターが嫌い。

市川は、そう言うと。

長い髪を、片耳だけにかける。

…すき…?

ほれた…?

そして一方、思ってもみなかった市川の心情を知らされたあたしは、その言葉に何て言っていいのかわからず…。

何故か、モヤモヤした感情が溢れだす。

…あ、まただ。また出てきた。何なんだろう、これ。

市川に新しく好きな人が出来たんだから、純粋に喜んで、応援してあげたい…のに。



「…日向…?」

「!」



少しの間考えていると、そのうちに市川が不思議そうにあたしを見つめてくる。

どうしたの?と。

あたしはそんな市川の問いかけに、我に返った。…フリをした。



「あっ…お、」

「?」

「おめで…とう!うん、おめでとう!」

「日向…」

「ご、ごめんちょっとビックリしちゃって。でも、応援する!応援するから!」

「…ありがと」



市川はあたしのそんな言葉を聞くと、嬉しそうに…だけど少し照れた様子で微笑む。

…なんか、アレだな。

やだな。今のあたし、ちゃんと笑えてる…のかな。

それでも、心の内では静かにそんなことを考えていたら、ふいに市川があたしに問い掛けてきた。



「…ていうか、日向は?」

「え、」

「日向はさ、好きな人とか…いないの?」

「!」

「本命くんは、相変わらず…なの?」
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