高桐先生はビターが嫌い。

…あまりストレートに聞くのは何だか抵抗を感じて、あたしはまず「友達」から入ってみる。

なるべくならわざとらしくならないように会話に集中するけれど…うまくできるだろうか。

あたしがそんなことを思っていると、高桐先生がきょとん、とした顔で言った。



「え…“トモダチ”？」

「ハイ。あのっ…高桐先生だったら、いっぱいいそうですよね！男女関係なく！」

「いやー、男の方が多いよ。っつかほとんどが男だし」

「そうなんですか？」

「まぁ、篠樹だったら女友達がそれなりにいるけど、俺は…いないようなモンだから」

「…？」



あたしはそんな高桐先生の言葉を聞くと、独り静かに首を傾げる。

…いないようなモン？って、どういうこと？

本当は、実際には、いるってこと…なの？

あたしはそんな高桐先生の言葉に引っかかりながらも、また口を開く。



「で、でも…大学でもモテました…よね？」

「え、俺？そんなことは無かったよ。俺奥手だし。だったら篠樹の方が断然モテてた」

「そ、そりゃあ後藤先生もモテそうですけど…でも、彼女くらいはいました…よね？高桐先生にだって」

「！」



あたしはそう言うと、真剣に、高桐先生の方を見遣る。

すると、そんなあたしの言葉に、またしても意外そうな顔をする高桐先生。

…聞き方が、ちょっとストレート…すぎたかな。

そう思って、言葉を変えようとあたしが口を開くと、その前に高桐先生が言った。



「……うん。そうだね」

「！」

「大学時代は、ちょっとだけね」

「…、」

「ってか、どうしたの？日向さん。なんか、そんなこと聞いてくるの日向さんらしくない。さっきからずっと、そのことについて悩んでたの？」