高桐先生はビターが嫌い。
高桐先生はあたしにそう言うと、不思議そうに首を傾げる。

あたしはそんな高桐先生に、「まぁ…そうですね」と答えにくいながらもそう返事をした。

…話題を変えたい。(自分で話を振っておいて何だけど)

だけど、これも市川の為…だから。

あたしは少し勇気を出してまた聞いてみた。



「じゃ、じゃあ…あんまり深く考えないで…聞いて、答えて下さいね」

「うん?」

「先生は今…好きな人とかって、いるんですか?」

「!」



あたしはそう問いかけると、高桐先生の方に目を遣って…だけど恥ずかしすぎてすぐに逸らす。

何を聞いてるんだろう…なんかこれじゃあまるで、あたしが高桐先生のことを好きみたいじゃん。

あたしがそう思っていてもたってもいられなくなっていると、そのうちに少し黙り込んでいた高桐先生が言った。



「好きな…人?え、それ聞くの?何で?」

「…、」

「や、いいんだけどさ別に。でも何かほんと、さっきも言ったけど日向さんらしくなくない?」

「あっ…あたしのことはいいですからっ。あんまり深くは考えずに…教えてください」

「……」

「…~っ、」



あたしがそう言うと、隣で高桐先生がまた少し黙り込む。

…やっぱり少し無理があったかな。

今は余裕でいなきゃいけないのに、恥ずかしさで高桐先生を直視できない…。

何でだろ。他の男の人とデートしてた時って、こういうこと…ほとんど無かったのに。

しかし、そう思いながら高桐先生の言葉を待っていると…。



「……好きっていうか」

「…?」

「いや、好きなんだけど。凄い大事で、守ってあげたくて、ずっと傍にいたい…いてほしい人なら、いるよ」

「!」



次の瞬間。

隣で、高桐先生が。

呟くように、確かに、そう口にした。
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