高桐先生はビターが嫌い。
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「なーおちゃんっ」
「!」
ある日の放課後。
家に帰ろうと教室を出たら、そこで聞きなれた声に名前を呼ばれた。
…この声は、
そう思ってゆっくり振り向くと、後ろにはやっぱり声の主である後藤先生がいて。
「…せんせい」
相変わらず、場所とか関係なく普通に名前にちゃん付けで呼んでくるんだな。
…嬉しいけど。
そう思いながら立ち止まったままでいたら、後藤先生がそのままあたしの近くまでやって来て言う。
「いま帰り?早いね」
「部活とかやってませんから。先生は何を…」
「俺は職員室戻るとこ。っていうか部活。奈央ちゃん入ればよかったのに。良い思い出になるよ。まぁ今更だけど」
「…いや、まぁ…」
確かに、部活に対しての憧れは少なからずあったんだけど。
たいていの部活には、部費が、ありまして。
ただでさえ父親との関係は良くないし、余計なお金は使いたくないから入らなかった。
そんな時のことを思いながら、
「ていうか先生…もしかして…あたしに何か…」
用ですか?
…しかし。
あたしがなんとなくそんな気がして聞こうとしたら、そのとき他の生徒の挨拶でそれを遮られた。
「後藤せんせーじゃーねー!」
「あほ。さようなら、だろ」
「さよーならー!」
「あい。気を付けてね」
「…」
後藤先生って、誰にでもフレンドリーだよね。
そう思ってその様子を眺めていたら、生徒に手を振ったあと、後藤先生がふいにあたしに言う。
「……なんだ、バレた?ちょっと奈央ちゃんに聞きたいことがあるんだけど」
「?」