高桐先生はビターが嫌い。

「…や、だな後藤先生」

「…」

「どうして……そんなわけないですよ」



…本当のところを言うと、後藤先生にそう言われた瞬間、自分の顔が少し熱くなったのがわかったけれど、あたしはそれを隠すように笑って下を向く。

今、後藤先生と目を合わせると、それだけで全部バレてしまいそうで…こわい。

だけど後藤先生の言葉は、何故か止まらない。



「…本当に?自分で気づいてないとかじゃなくて?」

「なんでですか。違いますよ」

「…ちゃんと言いきれる?」

「もちろん。そんな気持ち、持ち合わせてませんから。…そもそも相手は、教師だし」



あたしはそう言うと、今度は窓の外を見る。

そんな何気ない行動も、全部誤魔化し。

…だめ。バレそう。いやバレたくない。お願い、納得してよ後藤先生。

ってか、何で…市川のことでの相談のはずが、いつの間にかあたし自身の話になってるの…?

……そう思って、話を戻そうとしたら…



「…あのっ、」

「じゃあ、陽太が奈央ちゃんのこと好きなのは、知ってるよね?」

「…!?」



突然、話を遮られて。

後藤先生に、そんなことを言われた。



「……え、」



そして、いきなりの言葉にあたしはビックリして体を硬直させる。

だけどそれでも後藤先生はまた、話を続ける。

あたしにとって“マズイ話”。



「知らないはずないよね?今更」

「…、」

「アイツは奈央ちゃんのこと“本気”だよ。陽太は実際そんなことは言わんけど、長年の付き合いだからそれくらいは言わなくてもわかる」
< 136 / 313 >

この作品をシェア

pagetop