高桐先生はビターが嫌い。
「…や、だな後藤先生」
「…」
「どうして……そんなわけないですよ」
…本当のところを言うと、後藤先生にそう言われた瞬間、自分の顔が少し熱くなったのがわかったけれど、あたしはそれを隠すように笑って下を向く。
今、後藤先生と目を合わせると、それだけで全部バレてしまいそうで…こわい。
だけど後藤先生の言葉は、何故か止まらない。
「…本当に?自分で気づいてないとかじゃなくて?」
「なんでですか。違いますよ」
「…ちゃんと言いきれる?」
「もちろん。そんな気持ち、持ち合わせてませんから。…そもそも相手は、教師だし」
あたしはそう言うと、今度は窓の外を見る。
そんな何気ない行動も、全部誤魔化し。
…だめ。バレそう。いやバレたくない。お願い、納得してよ後藤先生。
ってか、何で…市川のことでの相談のはずが、いつの間にかあたし自身の話になってるの…?
……そう思って、話を戻そうとしたら…
「…あのっ、」
「じゃあ、陽太が奈央ちゃんのこと好きなのは、知ってるよね?」
「…!?」
突然、話を遮られて。
後藤先生に、そんなことを言われた。
「……え、」
そして、いきなりの言葉にあたしはビックリして体を硬直させる。
だけどそれでも後藤先生はまた、話を続ける。
あたしにとって“マズイ話”。
「知らないはずないよね?今更」
「…、」
「アイツは奈央ちゃんのこと“本気”だよ。陽太は実際そんなことは言わんけど、長年の付き合いだからそれくらいは言わなくてもわかる」