高桐先生はビターが嫌い。
…………


それから、どれくらいの時間が経過しただろうか。

いつのまにか真っ暗になっていた視界で、不意に突然頬に冷たい感触を感じた。



「わっ…!?」



その感触に、ビックリして目を開けると、そこには両手にジュースを持った高桐先生の姿があって…。

…なんだ、先生か…。

ていうか、あたしはいつのまに寝てたんだろう…。

そう思って、



「…せんせい」



ビックリしたじゃないですか。

思わず、目を細めてそう言いながら高桐先生を見遣ると、クスクス笑いながらあたしを見ている高桐先生が言う。



「や、気持ちよさそうに寝てたから、つい」



そう言って、高桐先生はあたしにジュースを渡して言葉を続けた。



「…ハイ。飲む?喉渇いたでしょ」

「あ。ありがとうございます。…あの、あとの2人は…?」

「ああ。あの2人なら、ジェットコースターが楽しすぎてもう一回乗りたいって、乗りに行ったよ」

「ええ、まじか」



高桐先生はそう言うと、あたしの隣に腰を下ろしてジュースを飲む。



「…あ、そだ。ジュース代いくらですか?」

「いや、いらないよ」

「え、そういうわけには…」

「素直に奢られときなって」



…ありがとうございます。

そして、高桐先生の隣であたしもジュースを飲みながらふと思う。

なんか…あたしが市川に協力して恋を応援するはずが、あたしが高桐先生と2人きりになっちゃったな…いいのかな…。

あたしはそう思うと、高桐先生に言った。



「…あの、先生はいいんですか?」

「何が?」

「ジェットコースター、もう一回乗らなくて」
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