高桐先生はビターが嫌い。
そう言って、「貸して」と。

あたしからそのカチューシャを手にとって、それをあたしの頭にかける。

かけたあと一旦あたしを見て、



「ほら、やっぱり似合う。かわいい」

「!」



なんて、ふんわりと笑顔を浮かべるから。

その笑顔に照れて、あたしは思わず言葉を失って…。

だけどそんなあたしの様子に気が付いていない高桐先生が、別の商品も手に取って、それをあたしの頭にかけた。

キャラクターの、顔の被りもの。



「こういうのも似合うんじゃない?…ほら」

「…、」

「みんなこういうの買ってたし、日向さんもかけてみなよ」


そう言って、「なんなら俺が選んであげようか?」なんて言うから、あたしは思わずお願いした。

…高桐先生が選んでくれたものなら、絶対、大事にしちゃう…あたし。



「じゃ、じゃあ…あたしも、高桐先生の、選びますよ、」

「え、俺はいいよ」

「何でですか。先生も耳とかつけたら絶対かわいいですよ。例えば…こういうのとか!」

「!」



あたしはそう言うと、内心ドキドキしながら手に取った人気商品を、高桐先生の頭にかける。

高桐先生は背が高いから、少し…背伸びをした。

だけど、その時…不意に目が合った先生は…意外とあたしの近くにいすぎて。



「…っ…あ、」

「…」

「…すみませんっ」



…気にしなければ普通のショッピングなのに。

顔を赤くする必要なんてないのに。

あたしは思わずそう口にして。

すぐに、高桐先生から離れた。

こっちの方が…気にしてしまった方が、自分から気持ちを伝えているようなものなのに。

可笑しなくらいに顔が熱い…。

…あ。だめだ。話を逸らさなきゃ。

しかし、あたしが咄嗟にそう思って、口を開くと…



「…あのっ、」
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