高桐先生はビターが嫌い。

「あーっ!高桐先生だー!」

「あ、ほんとだ!高桐先生がいるー!」


「!!」



その時。

同じお店に来ていたらしい他の生徒が、高桐先生の姿を見つけてしまって、一気に囲まれた。



「あっ…先生、」



あたしが慌てて手を伸ばすも…時すでに遅し。

それに気づかない高桐先生を、女子生徒達6~7人くらいが囲んでしまう。

確かこのコ達…今朝も高桐先生のこと、こうやって囲んでたな…。

そう思うと、あたしは思わず悲しくなってうつ向く…。

…何でよりによってこんな時に…ってか来るのが早い。



「ね、先生もここ来てたのー?」

「そこのジェットコースター乗った??」

「ねぇ先生、一緒にショッピングしよー?」



…このコ達には、どうやらあたしの存在は見えていないらしい。

高桐先生…人気者も大変…だな。

しかし、あたしがそう思ってその光景に背中を向けると…



「…あー…ごめん、みんな」

「…?」

「気持ちは嬉しいけど、先生、日向さんと一緒に待たなきゃいけない人がいるから」

「!」



高桐先生はそう言ってその団体をすり抜けると、再びあたしの隣にやって来る。

そんな先生の言葉と行動が、あたしにとっては凄く嬉しい…。

でも…



「ええー、先生そんなのヤダー」

「じゃあ、あたし達も一緒に待っててもいい?」

「あ、それいい!」



…なんとなく、目が笑っていない女子生徒達が、高桐先生にそう提案した。

って、そりゃそうだ。

大好きな人が、自分じゃない誰かと一緒に居たら、悲しいしムカつく…よね。

あたしはチラリと高桐先生に目を遣ると、その時先生と目が合って…

少し困った様子の高桐先生を助けるべく、あたしは口を開いて言った。



「っ…せ、先生、あたしなら大丈夫ですよ!」

「え、」
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