高桐先生はビターが嫌い。

「別に一人でも待てますから、先生は皆と一緒に楽しんできて下さい、」



あたしはそう言うと、さりげなく高桐先生から少し離れる。

…女子生徒達の表情が、ほんとに、こわいから…。

だけど、あたしのそんな言葉を聞くと、高桐先生は…



「何で、」

「?」

「せっかくなんだし2人で待ってようよ」

「!」



そう言って、



「ごめん、皆。今はそういうことだから、また後でね」



なんて女子生徒達に微笑みかけたあと、あたしを連れて店内の奥へと場所を離れた。



「ええー、先生~」

「ずるーい」



高桐先生があたしの手をとって歩く間、後ろからは女子生徒達のそんな不満そうな声が聞こえてくる。

口ではそう言っているけれど…いや後で仕返し的なことをされないかが心配だな。

っていうか、たぶん、目…つけられたな。

あたしは高桐先生の後ろを黙ってついて行きながら、不意にそんなことを考える。

するとそのうちに、さっきの場所から離れたところでようやく立ち止まる高桐先生。

そしてふとあたしの方を振り向くと、まるでそんなあたしの心情を知っているかのように、口を開いて言った。



「…ごめんね。余計いやな思いさせて」

「え、」

「さっき、結構怒ってたから、あの子達。後で何かされたりしたら、遠慮なく俺に言ってよ」



すぐに助ける。

高桐先生はそう言うと、あたしを励ますような笑顔を浮かべてくれる。

その笑顔を見て、一方のあたしは少し安心した。…気がした。

だけど…もっと先生を好きにさせるようなことは、しないでほしい。
< 149 / 313 >

この作品をシェア

pagetop