高桐先生はビターが嫌い。
「別に一人でも待てますから、先生は皆と一緒に楽しんできて下さい、」
あたしはそう言うと、さりげなく高桐先生から少し離れる。
…女子生徒達の表情が、ほんとに、こわいから…。
だけど、あたしのそんな言葉を聞くと、高桐先生は…
「何で、」
「?」
「せっかくなんだし2人で待ってようよ」
「!」
そう言って、
「ごめん、皆。今はそういうことだから、また後でね」
なんて女子生徒達に微笑みかけたあと、あたしを連れて店内の奥へと場所を離れた。
「ええー、先生~」
「ずるーい」
高桐先生があたしの手をとって歩く間、後ろからは女子生徒達のそんな不満そうな声が聞こえてくる。
口ではそう言っているけれど…いや後で仕返し的なことをされないかが心配だな。
っていうか、たぶん、目…つけられたな。
あたしは高桐先生の後ろを黙ってついて行きながら、不意にそんなことを考える。
するとそのうちに、さっきの場所から離れたところでようやく立ち止まる高桐先生。
そしてふとあたしの方を振り向くと、まるでそんなあたしの心情を知っているかのように、口を開いて言った。
「…ごめんね。余計いやな思いさせて」
「え、」
「さっき、結構怒ってたから、あの子達。後で何かされたりしたら、遠慮なく俺に言ってよ」
すぐに助ける。
高桐先生はそう言うと、あたしを励ますような笑顔を浮かべてくれる。
その笑顔を見て、一方のあたしは少し安心した。…気がした。
だけど…もっと先生を好きにさせるようなことは、しないでほしい。