高桐先生はビターが嫌い。

先生はわざとなの?それとも天然?

だってどうせ…どうせ……。


「…、」

「あ、そうだ。キャラクターのカチューシャつけるんじゃん。日向さんどれがいい?」

「さっき思ったんだけどさ、リボンついてるのかわいいよ。あー…ほら、例えばこれとか」

「!」



高桐先生はそう言うと、また違うカチューシャを見つけては、あたしの頭にそれをかける。

…憧れていた本当のデートみたい…まるで。

今まで何人もの男の人としていたそれとは、違う。何かが全然違う。

だけどこの前、後藤先生は言った。

高桐先生と噂になるようなことは控えてほしいって。

……だから、本当はこうやって2人でいるのも、凄く危ないこと…なのに。今更だけど。


「あ、これは!?これいいんじゃない!?魔女の帽子!」

「…」



だけど、いろいろ考えて不安になってしまうあたしをよそに、一方の高桐先生はそうやって楽しそうにしてるし。

あたしの頭に魔女の帽子をかぶせると、「似合ってるよ」なんてまた笑う。

…もしも、魔法が使えたら。

教師と生徒の恋愛なんて、当たり前にしちゃうのに。



「…じゃあ、先生はコレ」

「!」



あたしはやっと口を開くと、すぐ近くにあったあるものを先生の頭に乗せた。



「…王冠…?え、何気にハズイな」

「似合ってますよー先生。かっこいい。本当の王子様みたいで」

「!」



そしてあたしは高桐先生を見上げながらそう言うと、笑いかける。

…うん。先生はかっこいいから、王冠もよく似合う。…おもちゃだけど。

しかし、あたしのその言葉を聞くと、高桐先生は…



「……ごめん」

「…?」

「俺…もう我慢の限界」



これ以上は。

先生は、そう呟くと…
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