高桐先生はビターが嫌い。
「!」
次の瞬間。
お店のなかで、真正面からあたしを抱きしめてきた。
「せ、先生っ…!?」
一瞬、何をされたのか…されているのかわからなかったけど、体中に伝わる体温と、初めてじゃない知っているこの感覚に、「抱きしめられている」と気づくにはそう時間はかからなくて。
先生、これはマズイですよ。
誰かに見られちゃいますよ。
そう言って、離れなきゃと…思うけど。
心とは裏腹に、あたしの両腕は高桐先生の背中に、回したくなってしまう。
だけど、回したくなった時に、高桐先生が言葉を続けて言った。
「…ずっと、教師だからって思っておさえてたけど。これ以上は、これ以上はって、ブレーキはかけてた…つもりだったんだけど」
「…、」
「それは…反則じゃん。だめじゃん」
「…、」
「俺…日向さんが好き、」
「!」
先生はそう言うと…より一層、あたしを強く抱きしめる。
痛いくらいに抱きしめられるから、何だか先生の腕から気持ちがストレートに伝わってくるみたいで…あたしは思わず顔が熱くなって嬉しくなった。
このまま時間が止まってほしい、なんて…思うくらいに。
でも…あたしも、ここで自分の気持ちは…
しかし、そう思いながら口を開くと…
「いませんねー。高桐先生と日向」
「そうね。携帯も繋がらないし」
「!!」
「!!」
その時。
すぐ近くから、ふいに市川と杉野先生の声が聞こえてきた。