高桐先生はビターが嫌い。
先生とお出かけ。

******


爽やかな風が吹き抜ける、車の中。

聞いたことのない陽気な音楽が、耳に流れてくる。

英語の歌詞。

英語は苦手だから、あたしにはその歌詞の意味はよくわからないけれど。



「っ、ねぇ篠樹!それ俺が持ってきたお菓子!」

「いいじゃんよこせよ。っつかじゃー俺の何処なの、」

「…」

「え、篠樹いまの左じゃね?」

「こっちのが近道なんだよ」

「せっかくカーナビ設定したのにガン無視してんじゃん」

「…」



世の中は、待ちに待っていた大連休。

所謂、ゴールデンウイーク。

本当だったら今頃は、部屋で掃除機をかけたり、宿題をしたり…。

あ、ショッピングにも行く予定があったな。

そんなことを考えながら、車の中に流れているその曲を、なんとなく口ずさむ。


ところで。



「あ、奈央ちゃん先にショッピングセンター寄る?」

「え、」

「服買いたいんだっけ。いいよ、俺選んであげる」

「っつか陽太に聞いてねぇっつの」



賑やかな車の中。

あたしはどうして、学校が休みのこんな日に、先生たちと一緒にいるんだっけ。

そう考えて、頭の中で時間を遡ってみる。

…遡ること約2時間ほど前。

あたしが朝気持ちよく寝ていたら、確か、いきなり玄関でチャイムが鳴って…

寝ぼけ眼で出てみたら、そこには何故か準備万端の先生たちが2人立っていて…。

…あれ?これってまだ夢の中?

そう思っていたら、突然2人に言われたのだ。

「一緒に釣りに行こう」と。

…で、よくわからないまますぐ準備させられて、2時間後の現在は、未だによくわからないまま…車の中にいる。
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