高桐先生はビターが嫌い。
っていうか、何だか見慣れない街に来たけれど…ここどこなんだろう。
あたしはそう思うと、運転手をしてくれている後藤先生に聞いてみる。
「あの、釣りってどこでするんですか?」
「釣りねー、ここからだとまだ1時間はかかる場所でするんだけど」
「…あたし釣りとか未経験ですよ」
「あ、それは大丈夫。俺とか陽太が教えてあげるから」
そう言って、「特別課外授業だな」なんて。
後藤先生の隣に座っている高桐先生が、そう言って無邪気に笑う。
…ってか本当に、どうして突然釣りなんだろう…。
疑問だらけだけど、でも、学校行事以外のこんな遠出もいいな。
そう思いながら、車に揺られること数十分後…。
「奈央ちゃん、ここでいい?」
「!」
やがてようやく、大きめのショッピングセンターに到着した。
「すげー、ほんとに着いた。」
「だから、さっき近道だっつったろ?っつかお前帰り運転変われな?マジで」
「ん、それはわかってる」
…久々のちゃんとしたショッピングで、そんな2人の会話をよそに、あたしは内心胸を躍らせる。
しかも、誰かと一緒にショッピングセンターに…なんて。
これは本当に久しぶり…いや、下手したら初めてかもしれない。
後で釣りにも行くからそんなに時間はないけれど、あたしは高桐先生や後藤先生と一緒に、早速その中に入った…。
…ここなら学校からかなり距離があるから、誰かに見られる心配もない…。