高桐先生はビターが嫌い。
「…まぁ確かに。まだ付き合ってはいないんだけどさ」
「…」
「…日向さんの卒業後に、そうなる予定を立てただけで」
あの日。遊園地に行った日に、約束をしたのだ。
あたしが高桐先生の背中に両腕を回してしまった時点で、あたし自身の気持ちもバレてしまったようなものだから。
ちゃんと卒業したら、その時に付き合おうと。
それまでは、ちゃんと教師と生徒でいようって、決めた。
…あの瞬間は幸せだったな。
けど…
「…でも、本当にいいんですか?いくら後藤先生も一緒とはいえ…このメンバーでこうやって遊びに来ていても」
「え、」
「だって誰が見てるかわからないし。…まぁ、車で数時間の場所だから、大丈夫そうではありますけど」
あたしはそう言うと、不安げに高桐先生に目を遣る。
するとその時にバチっと合う視線。
しかしあたしのそんな言葉を聞くと、高桐先生が言った。
「…どうせ遊びに行くなら、日向さんも一緒が良くて。それに、篠樹もすぐに賛成してくれたからこうやって来てるわけだし」
「でも…」
「…もしかして、嫌だった?」
高桐先生はふいにあたしにそう問いかけると、あたしの目を見て首を傾げる。
しかもその問いかけにあたしが首を横に振る前に、高桐先生が言葉を続けた。
「じゃあ…帰る?」
「!」
そう言うと、残念そうにあたしの顔を覗き込むから。
そのまさかの言葉に、あたしは思わず必死で高桐先生に言う。
「っ…イヤ!やだやだ、帰りたくない!」
「!」
「確かに不安ではあるけど、それは違うんですよ先生。帰りたいかって聞かれると、絶対帰りたくはないんですけどっ…」
あたしが言ってるのは、
しかし、そう言って話しを続けると…
「…わかってるよ」
「!」