高桐先生はビターが嫌い。

「…まぁ確かに。まだ付き合ってはいないんだけどさ」

「…」

「…日向さんの卒業後に、そうなる予定を立てただけで」



あの日。遊園地に行った日に、約束をしたのだ。

あたしが高桐先生の背中に両腕を回してしまった時点で、あたし自身の気持ちもバレてしまったようなものだから。

ちゃんと卒業したら、その時に付き合おうと。

それまでは、ちゃんと教師と生徒でいようって、決めた。

…あの瞬間は幸せだったな。


けど…



「…でも、本当にいいんですか?いくら後藤先生も一緒とはいえ…このメンバーでこうやって遊びに来ていても」

「え、」

「だって誰が見てるかわからないし。…まぁ、車で数時間の場所だから、大丈夫そうではありますけど」



あたしはそう言うと、不安げに高桐先生に目を遣る。

するとその時にバチっと合う視線。

しかしあたしのそんな言葉を聞くと、高桐先生が言った。



「…どうせ遊びに行くなら、日向さんも一緒が良くて。それに、篠樹もすぐに賛成してくれたからこうやって来てるわけだし」

「でも…」

「…もしかして、嫌だった?」



高桐先生はふいにあたしにそう問いかけると、あたしの目を見て首を傾げる。

しかもその問いかけにあたしが首を横に振る前に、高桐先生が言葉を続けた。



「じゃあ…帰る?」

「!」



そう言うと、残念そうにあたしの顔を覗き込むから。

そのまさかの言葉に、あたしは思わず必死で高桐先生に言う。




「っ…イヤ!やだやだ、帰りたくない!」

「!」

「確かに不安ではあるけど、それは違うんですよ先生。帰りたいかって聞かれると、絶対帰りたくはないんですけどっ…」



あたしが言ってるのは、

しかし、そう言って話しを続けると…



「…わかってるよ」

「!」
< 164 / 313 >

この作品をシェア

pagetop