高桐先生はビターが嫌い。
そしてあたしの言葉に後藤先生が反応すると、少し驚いた様子で言った。



「え、何、観てないシーンとかあったの?」

「ちがっ…いやちがくはないけど」

「お前生徒に見られてるよ、」



そう言うと、、「先生~」とからかい気味に笑う後藤先生。

するとそんな後藤先生とあたしに、高桐先生が言う。



「いや、だって怖いじゃん!この際はっきり言うけど、怖いじゃん!マジで!」

「ようやく言った、」

「や、だって考えてみて。あの巨大なスクリーンに、暗闇の中でアレはもう…殺しにきてるでしょ!」

「楽しませに来てんだよ」



殺されはしねぇよ。

高桐先生が言う言葉に後藤先生はそう返すと、その時「ね?奈央ちゃん」とあたしに同意を求める。

怖がる高桐先生は少し可哀想にも見えるけど…



「…そうですね。映画で死にはしないです」



でも、それ以上に可愛さが増して、思わずそう言ってしまう。

そして、「もうホラーは一生観ない」らしい高桐先生は、きっと誰よりも怖がりで。

そんな高桐先生を、あたしはもっと好きになった気がした。
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