高桐先生はビターが嫌い。
高桐先生のその言葉を聞くと、あたしは少しビックリして後藤先生とその彼女さんのほうを向く。
…後藤先生、彼女いたんだ。
って、そりゃあ後藤先生カッコいいし気さくで優しいから、いても可笑しくない。
後藤先生と彼女さんの会話を聞いてみると、どうやら彼女さんは先生達の明日の分のご飯の作り置きを冷蔵庫に置きに行っていたらしい。
…あれ?じゃあ、意外と先生達のご飯はコンビニだけとかじゃ…ないんだ。
あたしがそう思いながら二人に目を遣っていると、その時にふとその彼女さんと目が合って、言われた。
「ところで、その子だれ?」
「え、」
ふいにそう言われ、彼女さんがあたしに近づいてくる。
…香水の良い香り。
“アイリ”と名前を偽って遊んでいた時のあたしとは全然違う、大人な雰囲気…。
その言葉にあたしが答えようとした時、その前に高桐先生が言った。
「…この子は学校の生徒だよ」
「え、高校の?何でこの時間に生徒つれ回してるの。悪い先生ね」
「違うよ。隣に住んでるからね。まぁ…近所付き合い?的なもので」
「ふーん?」
近所付き合いねぇ。
彼女さんは高桐先生の言葉にそう呟くと、あたしと目を合わせてくる。
…大きな黒目。でもカラコンをしているみたい。
なんか、嘘をついてもすぐに見破られそうな、そんな雰囲気…。
あたしがそんな彼女さんの目から思わず視線を逸らすと、その時に後藤先生が彼女さんに言った。
「ヤメロ。奈央ちゃんビビってんだろ」
「え、ビビってはないでしょ。ってか今日出かけて行くのに女の子もいるなら言ってほしかった、」
「…や、まぁでも生徒だし。心配は無用だと思って」