高桐先生はビターが嫌い。

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「…平気?」

「え、何がですか?」



ある日の晩ごはん。

目の前にあるたくさんの唐揚げを食べるあたしに、ふいに高桐先生がそう聞いてきた。

その突然の問いかけにあたしが首を傾げると、高桐先生が言葉を続ける。



「いや、何か最近、日向さん独りでいること多くない?と思って。学校で。だから、平気?」

「…それはあたしは普段からずっとそうですから」

「や、でもほら…市川さんと最近話してるところ、見てないよ。すごい気になる」



高桐先生はそう言うと、本当に心配そうに、あたしを見つめる。

何かあるんなら遠慮しないで言ってよ、と。

だけどそんな高桐先生の言葉を、あたしは有り難く頂戴して、胸の中にしまった。

…だって、今のあたしには学校生活よりも気になることがあるから。



「…それは別に、本当に、気になってないんですよ。心配とか本当にご無用なんで」

「でも…」

「でもあたしが実際気にしてるのは、先生。この前…ゴールデンウィーク中に出会った後藤先生の彼女さんのことなんですけど」

「え、唯香?」

「!」



あたしがそう言うと、高桐先生は。

突如…無意識に、なのかそうやって名前を口にした。

…下の名前を、呼び捨てにして呼んでるんだ。

あまりにも自然に言うから、一瞬スルーしかけたけど。

あたしが思わず高桐先生の方を向くと、それに気がついていない高桐先生が言う。



「唯香がどうかした?」

「…」



…なんか、この前も思ったけれど。

あの時後藤先生の彼女さんが言ってた「陽ちゃん」呼びも、今の高桐先生の「唯香」呼びも…なんだか凄く羨ましい。

あたしはそう思いながらも、口を開いて高桐先生に言った。
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