高桐先生はビターが嫌い。
「いや、何か…仲が良いんだなぁと思って。呼び方、とか」
あたしが高桐先生の方を見ずになんとなくそう言うと、その言葉を隣で聞いた高桐先生が言う。
「まぁそりゃあ…友達だからね」
「先生、“陽ちゃん”って呼ばれてましたよね。すっごくかわいい」
「かわ…そうかな?なんか女々しくない?俺、実際あんまり気に入ってないよ、その呼び方」
「!」
だったら“先生”って呼ばれる方がいい。
高桐先生はそう言うと、少し驚くあたしをよそにから揚げを食べすすめる。
そんな言葉を口にする高桐先生の隣で、あたしは思わず箸の手を止めた。
…え、何それ。じゃあ…あたしが気にしすぎなのかな。
高桐先生のその様子だと…心配しなくても本当に大丈夫なのかもしれない。
あたしはそう思うと、少し安心してまたから揚げを一口、口に含む。
だけど…
「あ、でも…」
「?」
「昨日、唯香からラインきたよ」
「えっ…何て!?何て言われたんですか!?」
不意に突然、高桐先生がそんなことを言うから。
あたしはまた驚いて、高桐先生の方を向く。
そして慌ててそう聞くと、高桐先生が言った。
「日向さんのこと言ってた。ほら、学校での俺達のこと?とかアイツ知らないからさ。日向さんを通じて知りたいって」
「!」
「だからまた…この前みたいにこのマンションで出くわしたりすると思うけど、その時にそれ、聞かれたら俺達のこと適当に言っといてよ。嘘でもいいから」
高桐先生はあたしの問いかけにそう言うと、あたしの心配をよそに無邪気に笑う。
嘘でもって…あたしは多分、正直に話すと思う…けどな。
……あ、でも…良いところはきっと、だいぶ省略しちゃうかもしれない…けど。