高桐先生はビターが嫌い。
その時に、市川と久しぶりに近くで目が合って。

あたしは、心から改めて思った。

…結局あたしは、市川の事が大好きで…大好きだから、嫉妬ばかりしてたんだ…。

あたしはそう思うと…思わず、市川から視線を外して、言った。



「…違うよ」

「?」

「あたし、市川が思ってるほど…良い奴でもない」

「…、」



あたしはそう言うと、ゆっくりと、今までの事を市川に話す。

急に市川が自分たちから離れて、今までイジメていた日向といきなり仲良くなって面白くなかったこと。

面白くなかったから、何かわけが知りたくて市川と日向を放課後に尾行したこと。

で、そこで市川が高桐先生に惚れていることを初めて知って、その上でそれを高桐先生本人に言った事…。

全てを、話した。

日向と市川が離れて、また自分たちのところに来てほしいと、思っていたと…。



「…だから、全然良い奴じゃない。さっき、後藤先生に言われて初めて気づいたんだ。
知らなかったからって嫉妬してマイナスなことをするんじゃなくて、自分から聞くべきだったんだよね、友達だったらさ…市川本人に」

「…」

「…で、いま市川、日向とまた離れてるじゃん?それ、日向のせいじゃないから。悪いのは完全にあたし。あたしの方…」

「…」

「市川…ごめんね」



あたしはそこまで言うと、少し泣きそうになって、でも泣きたくはなくて、とにかく市川に謝る。

…市川の性格だったら、許してもらえないかもしれない。

いや、許してくれないと思う。

だってそれが、今までのあたし達に対する市川の接し方だった…から。

あたしがそう思いながら頭を下げると…やがて小さなため息を吐いて、市川が言った。



「…顔、上げてよアイ」

「…、」

「あのね、あたしは全部知ってたよ」

「…えっ」

「アンタの悪行、ぜーんぶ。」
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