高桐先生はビターが嫌い。
その言葉に、その時ビックリしたあたしは、高桐先生の言葉に思わず固まった。

…だって、そのことは誰にも内緒で…間違いじゃなければあたししか知らないはず…。

なのに、何で高桐先生本人が…そんなこと聞くの?

あたしがそう思って言葉を失っていると、高桐先生が言葉を続ける。



「…北島さんから、この前言われたんだ。市川さんが、俺に惚れてるって。
そういう噂が流れてるみたいな…」

「…」

「ま、まぁもちろん信じてはないけどね!北島さんが何かの理由でわざとそう言ったんならマズイからさ、心配で…」



高桐先生からいきなりそんなことを聞かされたあたしは、思わずビックリしてしばらく動けなくなった。

…これはすぐにでも市川に知らせなきゃ。

なんて…そう思って、遊園地から帰って来た時。

家までの帰り道で、あたしは市川に切り出したんだっけ。



“……ねぇ、市川”

“うん?あ、日向は高桐先生といて、どうだった?”

“その話、なんだけど……今から…問題発言、してもいい?”


“実は…北島さんが、高桐先生本人に、市川の気持ちを勝手に伝えたらしいの”



…あたし自身も、まだビックリしたままそう言ったら…。

市川も、当たり前だけど驚いてたな…。

あたしはその時のことを思い出しながら、市川の気持ちは隠したまま高桐先生に言った。



「…だから、市川に言ったらちょうど北島さんとは少し気まずくなってたみたいで…。
これ以上状況が悪くならないように、市川とはわざと学校で話さないようにしてたんです」

「そうなんだ…それで…」

「でも、もう大丈夫です。実はさっき、市川からラインがきましたから。“アイとちゃんと話して全部解決できたよ”って」



明日からはまた市川と一緒にいられますよ。

あたしがそう言うと、高桐先生は「そっか…」とやっと安心した顔を見せてくれた…。
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